歯科用レーザーの種類と機能(ErYAG・NdYAG・CO₂の違い)
インプラント治療の進化に伴い、歯科用レーザーの活用が増加しています。特にErYAGレーザー、NdYAGレーザー、CO₂レーザーは、歯科医療の現場でそれぞれ異なる目的で使い分けられています。これらのレーザーは波長や吸収特性、臨床応用の範囲が異なり、それぞれの特性を理解することが、正しいインプラント治療を受ける第一歩になります。
ErYAGレーザーは波長2940nmのレーザーで、水と親和性が高く、歯肉や骨など水分を多く含む軟組織・硬組織の処置に適しています。切開や蒸散、殺菌作用がある一方で、熱による周囲組織のダメージを最小限に抑えられるのが特長です。歯周病治療やインプラント周囲炎の処置にも有効で、再生療法との併用にも対応します。術後の腫れや痛みを軽減できる点で、患者にとっての安心材料になります。
一方でNdYAGレーザーは波長1064nmで、色素に吸収されやすく、特に細菌に対する殺菌力が高いのが特長です。歯肉の深部にある細菌にまでエネルギーが到達しやすく、歯周ポケット内部の消毒、インプラント周囲炎の内部処理に適しています。ただし、熱による作用が強いため、使用には高い技術が求められます。
CO₂レーザーは波長10600nmと非常に高く、表層の水分に強く反応するため、表面の切開や止血に適しています。口腔粘膜の手術、舌小帯切除、口内炎治療などに利用され、止血効果が高いため術中の視認性を高め、手術の精度を向上させる利点があります。
以下にそれぞれのレーザーの特性を比較した表を示します。
| レーザー種類 |
波長(nm) |
適応範囲 |
主な用途 |
特長 |
| ErYAG |
2940 |
軟組織・硬組織 |
歯周病治療、インプラント周囲炎、骨切削 |
痛みが少なく、熱ダメージが少ない |
| NdYAG |
1064 |
深部軟組織 |
歯周ポケット内の殺菌、歯肉消毒 |
高い殺菌力、深部への作用が可能 |
| CO₂ |
10600 |
表面軟組織 |
粘膜切開、止血、小手術 |
止血効果が高く、術野が見やすい |
これらのレーザーを導入している歯科クリニックは、診療ガイドラインに則って使い分けており、レーザーの特性と治療方針が適切に結びつけられています。歯科医師の経験と技術、機器の性能が相互に作用することで、より高度な歯科医療が実現されているのです。
レーザーを併用する理由(殺菌・切開・止血まで1台で完結)
インプラント治療におけるレーザー併用は、治療工程の質と安全性を大きく向上させる方法として注目されています。レーザー機器1台で、殺菌、切開、止血、蒸散といった複数の処置をカバーできるため、従来の手術器具に比べて治療の効率と患者の負担軽減が飛躍的に向上するのが大きな特徴です。
まず注目されるのが殺菌効果です。インプラント手術では、歯肉の切開や骨へのドリリングなどの工程で細菌感染リスクが伴いますが、レーザーはその場で殺菌が可能なため、感染リスクを大幅に抑えることができます。特にNdYAGレーザーやErYAGレーザーの照射により、インプラント埋入部位の細菌数を効率的に減らすことができ、術後の炎症やインプラント周囲炎の発症率を下げる効果が報告されています。
さらに、レーザーは切開時の出血を最小限に抑える止血作用を持ち、出血量を大幅に減らせます。これにより術野が明確に保たれ、精密な手術が可能になります。CO₂レーザーはこの点で特に優れており、止血と同時に切開ができるため、視認性を維持しながら処置を進めることが可能です。術中のストレスを軽減し、処置時間の短縮にもつながります。
以下の表に、レーザー併用のメリットを従来手法と比較してまとめました。
| 処置項目 |
従来のメス手術 |
レーザー併用治療 |
| 殺菌機能 |
なし |
あり(照射による殺菌) |
| 切開精度 |
医師の手技に依存 |
自動制御で安定 |
| 出血量 |
多い |
少ない(止血効果あり) |
| 痛み・腫れ |
起こりやすい |
軽減されやすい |
| 処置時間 |
やや長い |
短縮される傾向 |
治療工程の短縮やリスク低減に加え、患者満足度の向上も報告されています。国内の一部クリニックでは、術後アンケートにおいてレーザー併用の満足度が90%以上を記録した事例も存在します。