治療前に行う検査とは?、CT・3Dスキャンで精密診断
矯正治療を始める際に重要なのが、初診時の検査と診断です。ここでの情報収集の正確さが、その後の治療計画の精度や、最終的な仕上がりに大きな影響を与えます。従来はレントゲンや視診を中心とした診断が主流でしたが、近年ではCTや3Dスキャナーを用いた精密診断が一般化しており、より客観的かつ立体的に口腔内を把握することが可能となっています。
| 検査項目 |
内容 |
目的 |
| 視診・問診 |
医師が肉眼で歯並びやかみ合わせを確認し、生活背景をヒアリング |
顎の動き・口元のバランス・悩みの特定 |
| パノラマレントゲン |
上下左右の歯の状態を一度に撮影 |
歯根・埋伏歯・虫歯・骨の状態を把握 |
| セファロ分析 |
頭部X線規格写真に基づく骨格・成長方向の分析 |
顎の形やバランスを数値化して比較 |
| CTスキャン |
三次元で骨・神経の位置まで把握可能 |
精密な装置設計・抜歯要否の判断材料 |
| 口腔内スキャナー(3D) |
歯型のデジタルデータ化 |
マウスピース矯正や装置設計の正確性を向上 |
| 写真撮影(顔・口元) |
正面・側面の静止画を記録 |
経過観察・治療前後の比較に使用 |
これらの検査を通じて得られたデータを元に、矯正治療の全体設計が行われます。歯の角度・傾き・スペースの有無、骨格のバランスを多角的に分析することで、抜歯が必要かどうか、どの装置が適しているか、何か月で完了しそうかなどを科学的にシミュレーションできるようになります。
治療中のスケジュールと通院頻度、調整の内容と注意点
矯正治療がスタートしたあとは、定期的な通院と装置の調整が必要となります。矯正装置には歯を徐々に動かす力が加えられており、その力が適切な状態で維持されるよう、数週間から数か月おきに通院して調整を行います。
| 装置タイプ |
通院頻度 |
調整内容 |
通院時のポイント |
| マウスピース矯正 |
約1~2か月に1回 |
新しいマウスピースの確認・交換 |
装着時間の確認と適合チェック |
| ワイヤー矯正 |
約3~6週間に1回 |
ワイヤーの交換・締め直し・ゴムの調整 |
痛みや違和感の相談、清掃確認 |
| 部分矯正 |
症例により異なる |
特定の歯の移動にフォーカスした調整 |
矯正範囲が狭いため短期間で完了する場合もあり |
治療中の主な注意点には次のようなものがあります。
- 装置の破損や外れは早めに対応を
- 食事内容に配慮し、硬い物・粘着質の物は控える
- 歯磨きは時間をかけて丁寧に行い、虫歯や歯周病を予防する
- 治療初期や調整直後は痛みや違和感が出やすいため、体調管理を意識する
治療中の経過確認として、数か月おきに再検査を行うこともあります。歯の動きが計画通りかどうか、装置の効果がしっかり発揮されているかをチェックし、必要に応じて治療計画を微調整するのです。
治療後の保定とは?後戻り防止のための通院と装置管理
矯正治療が完了したあと、もうひとつ大切なステージが始まります。それが「保定」と呼ばれる工程です。保定は、動かした歯が元の位置に戻ろうとするのを防ぐために、リテーナーと呼ばれる保定装置を一定期間装着し、歯列を安定させるプロセスです。
歯は骨の中にある繊維で支えられており、矯正によって動かされた後も、しばらくの間は元の位置に戻ろうとする「後戻り」の力が働きます。これを放置すると、せっかく時間と労力をかけて整えた歯並びが再び崩れてしまう恐れがあります。
| 保定装置の種類 |
装着方法 |
特徴 |
装着時間の目安 |
| 取り外し式(クリアタイプ) |
就寝時のみなど |
目立たず使いやすい |
数か月〜1年以上 |
| 固定式(ワイヤー) |
歯の裏側に接着 |
常に安定性が保たれる |
数年単位で装着する場合も |
| マウスピース型リテーナー |
インビザライン後に多い |
見た目が自然で管理しやすい |
状況により就寝中のみ可 |
保定期間は個人差がありますが、一般的に少なくとも1〜2年程度は必要とされます。最初の数か月は毎日装着し、その後は徐々に頻度を減らしていくのが通例です。歯科医師の指示に従って装着スケジュールを守ることが大切です。
保定期間中も数か月に一度の通院が推奨されており、次のような目的で診察が行われます。
- リテーナーのフィット感確認
- 歯の位置の安定状態の評価
- むし歯や歯周病の早期発見
- 生活習慣による再度の歯列変化の予防
保定装置は目立ちにくく、生活に支障を与えにくい設計のものが増えていますが、清潔に保つことや破損を防ぐ意識も重要です。とくに取り外し型のリテーナーは、誤って紛失したり、変形させてしまったりすることがあるため、保管ケースの使用や定期的な洗浄を習慣にすることが求められます。
治療後の保定をおろそかにすると、治療前とほとんど変わらない状態に戻ってしまうこともあるため、見た目だけでなく、将来の健康維持の観点からも真剣に取り組む必要があります。矯正が終わったからといって油断せず、継続的なケアを続けていくことが、歯並びの美しさと快適な口腔環境を保つ鍵となります。