基本的な洗浄は、使用後すぐに水洗いを行うことから始まります。流水で表面の汚れを落とした後、やわらかい歯ブラシなどで軽くこすり、唾液やプラークを取り除きます。このとき、歯磨き粉を使用する方もいますが、実は研磨剤が含まれているものが多く、マウスピースの表面を傷つけてしまう可能性があるため注意が必要です。歯磨き粉の代わりに、中性の食器用洗剤を少量使うことで、汚れを落としながらもマウスピースを傷めることなく清潔に保てます。
より効果的に除菌したい場合は、専用の洗浄剤を使った浸け置き洗浄がおすすめです。市販されているマウスピース洗浄剤は、タブレット型や粉末型が多く、コップ1杯の水に指定時間浸けることで除菌・消臭効果を発揮します。多くの製品が1日1回の使用で十分な効果を得られる設計になっており、手間もかかりません。
以下に、洗浄方法と洗浄剤の特徴を比較した表をまとめました。
マウスピースの洗浄方法と洗浄剤の比較表
洗浄方法
|
使用頻度
|
必要な道具
|
メリット
|
注意点
|
水洗い+ブラッシング
|
毎回使用後
|
やわらかめの歯ブラシ、水
|
表面の汚れをすぐに除去できる
|
研磨剤入り歯磨き粉は使用しないこと
|
中性洗剤洗浄
|
週1〜2回
|
中性の食器用洗剤
|
洗剤の成分で軽度の油汚れも落とせる
|
強く擦ると傷がつく可能性がある
|
洗浄剤浸け置き
|
週2〜3回
|
専用洗浄剤+コップ
|
除菌・消臭効果が高い
|
使用時間を守らないと素材が劣化する恐れ
|
洗浄剤を選ぶ際は、マウスピース専用に設計された製品を選ぶことが大切です。入れ歯用の洗浄剤と共通で使用できるものもありますが、中には素材への影響が大きいものも存在するため、歯科医院で推奨されている商品を使用するのが安全です。また、ドラッグストアなどで手に入る商品でも、アルカリ性が強すぎるものや、塩素系成分を含むものは避けるようにしましょう。
日常的に行う簡単なケアでも、マウスピースの寿命を延ばし、口腔内の健康を保つことが可能です。清潔を維持することで、細菌によるトラブルを未然に防ぎ、安心して長く使用することができます。
マウスピースの清潔さを保ちたいという思いから、自己流で過剰な洗浄を行ってしまう方も少なくありませんが、その行為がかえってマウスピースを傷め、機能性を損なう結果につながることもあります。誤ったお手入れ法は、マウスピースの変形や劣化、さらには雑菌の繁殖を招く危険性があるため、正しい知識を持つことが非常に重要です。
まず、もっとも多いNG例が、熱湯での消毒です。熱湯によって雑菌を殺菌しようと考えるのは自然な発想ですが、マウスピースは多くの場合、熱可塑性の樹脂で作られているため、70度を超える熱にさらされると簡単に変形してしまいます。わずかな歪みでも、噛み合わせや装着感に大きな影響を及ぼすため、熱湯での洗浄は絶対に避けなければなりません。
次に、漂白剤や塩素系洗剤の使用も避けるべき方法です。これらの洗浄剤は除菌力が強いため一見効果的に思えますが、マウスピースの素材に深刻なダメージを与える可能性が高く、長期間の使用で素材が脆くなりひび割れが生じるリスクがあります。さらに、口腔内に残留した成分が付着することで、粘膜や歯肉を刺激し、口内炎や炎症を引き起こすこともあります。
また、硬めの歯ブラシや金属製のブラシでゴシゴシと強く磨くのもNG行動の一つです。表面に細かな傷がつくことで、そこに細菌が付着しやすくなり、除菌効果が低下してしまうほか、マウスピースの透明性も損なわれてしまいます。見た目が白く濁ってきたと感じたら、それは過度な摩擦や素材の劣化のサインかもしれません。
洗浄後に自然乾燥させず、濡れたままケースにしまうのも避けるべき行動です。密閉された環境で湿気がこもると、細菌やカビの繁殖が促進され、悪臭や変色の原因になります。マウスピースを収納する際は、風通しの良い場所でしっかり乾かしてから専用ケースに保管することが大切です。
以下は、やってはいけないお手入れ法とそのリスクをまとめた一覧です。
避けるべきマウスピースのNG洗浄法とリスク
NG行動
|
理由・リスク
|
熱湯での消毒
|
熱で変形し、装着時に違和感や機能低下を招く
|
漂白剤・塩素系洗剤の使用
|
素材を劣化させ、口内に刺激成分が残る可能性がある
|
金属ブラシでの洗浄
|
表面を傷つけ、細菌の付着を助長し透明感が失われる
|
水滴がついたまま保管
|
湿気によるカビ・雑菌繁殖、悪臭、素材の変色を招く
|
歯磨き粉での洗浄
|
研磨剤により表面に細かな傷がつき、衛生面にも悪影響
|